SaaSビジネスを行っていると、NRRという単語がよく使われます。
SaaS企業にとっては重要な指標になりますので、この記事でNRRの内容について解説いたします。
NRRの意味
まず、NRRですが、Net Revenue RetentionもしくはNet Retention Rateの略で、日本語で言うと「売上維持率」となります。
NRRの意味としては、既存の顧客の売り上げが比較時点に対してどの程度増減しているかを表す指標となります。
100%を上回っていれば、アップセルなどで収益が向上していることを示し、100%を下回っていれば、ダウングレードやチャーンなどで収益を落としていることを示しています。
一般的に成長期のSaaSベンチャーは110~120%くらいを維持していると言われています。
NRRの計算式
NRRの計算方法は次の通りです。
- 比較時点の顧客を抽出する
- (1の顧客の)今月のMRR/比較時点のMRR
計算式だけでは分かりにくいと思いますので、具体例で見ていきましょう。
MRRについて知りたい方は、先にこちらの記事もご覧ください。
では、具体例でNRRを計算していきます。
下記のようなMRRの推移だったとします。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | |
A社 | 100 | 120 | 120 | ー |
B社 | 150 | 140 | 130 | 130 |
C社 | ー | 200 | 220 | 220 |
この時の対前月のNRRを順番に計算してみます。
まず2月のNRRの場合は次の計算になります。
1、対象の顧客は比較する1月のMRR対象となっているA社とB社です。
2、A社とB社の2月のMRRは(120+140)、A社とB社の1月のMRRは(100+150)
従って2月のNRRは(120+140)/(100+150)=104%となります。
同様に3月のNRRは2月のMRR対象となっているA社、B社、C社の3社の数字を使用し、(120+130+220)/(120+140+200)=102%
同様に4月のNRRは(0+130+220)/(120+130+220)=74%となります。
新規の顧客は計算に入れず、あくまで既存の顧客だけのMRRを比較することになります。
NRRを高める方法
NRRを高めるには、計算式からも明白ですが、既存の顧客からの収益を拡大することが必要になります。
もう少し分解すると、以下の2つになります。
- アップセルで収益を増やす
- ダウングレード、チャーンを減らす
この2点が重要になります。
アップセルというと難しく聞こえるかもしれませんが、ビジネスモデルを上手く設計すれば難しくありません。
例えばマネーフォワードの場合、経費精算システムを販売していますが、ユーザーアカウント数に応じて金額が変動する仕組みとなっています。
従いまして、お客さんの会社の従業員数が増えれば自動的にアップセルされ続けます。
具体的には、1ユーザーあたり月額100円の利用料を取っている場合、従業員が5人増えれば500円のアップセルとなります。
経費精算を使用しない従業員はいませんので、入社したら必ずアカウントを増やすしかないですよね。
従って、お客さんの会社が成長することで、自社も収益が上がっていく仕組みを作り、アップセルしやすいビジネスモデルにすることも1つの戦略となります。
まとめ
NRRについて解説いたしました。
これ以外にもSaaSでKPIとされている指標はいくつかありますので、気になる方はこちらの記事もご覧ください。
また、SaaS業界について知りたい方はこちらの記事もご覧ください。