令和6年度税制改正大綱が2024年3月30日に公布されました。
この税制改正により改正されたものはいくつかありますが、この記事ではその中でも外形標準課税への影響について解説いたします。
外形標準課税とは?
まず、外形標準課税とは何か簡単にご説明します。
法人に課される税金は基本的には所得に応じて課税されますので、利益を出している法人が税金を支払うことになり、赤字の法人は支払わなくてもよいことになります。
しかし、利益を出しているかに関係なく、国や地域の行政サービスは受けていますので、赤字の企業であっても一定の規模の会社は税金を負担する必要があります。
そこで、所得に応じてではなく、法人の規模に応じて税金を課すものが外形標準課税となります。
外形標準課税の内容
具体的に外形標準課税の内容についてご説明します。
まず外形標準課税の対象となる法人ですが、事業年度終了日に資本金または出資金の額が1億円を超える法人になります。期中に1億円を超えていても、期末日に1億円以下になっていれば外形標準課税の対象からは外れます。
外形標準課税として課税される内容は3種類ありまして、所得割、付加価値割、資本割の3つになります。
所得割は文字通り所得に応じて課税される税金になりますが、付加価値割と資本割が法人の規模に応じて課税される税金となります。
付加価値割は収益配分額と単年度損益の合計から計算し、収益分配額は報酬給与額と純支払利子と純支払賃料から構成されています。
資本割は資本金等の額から計算されます。
令和6年度税制改正の内容
令和6年度税制改正により、この外形標準課税の変更となる点は対象法人の考え方です。外形標準課税の対象となる法人が以下の3つになりました。
1、資本金の額または出資金の額が1億円を超えている法人(従来通り)
2、当該事業年度の前事業年度に外形標準課税の対象であった法人であって、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える法人(新設)
3、資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人又は相互会社・外国相互会社の100%子法人等のうち、当該事業年度末日の資本金が1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超える法人(新設)
減資への対応
2つ目の当該事業年度の前事業年度に外形標準課税の対象であった法人であって、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える法人が対象となったのは、減資を行うことによって、外形標準課税の対象から外れようとする法人が多いことから、その対策のためとなります。
この条件となったため、前事業年度に外形標準課税の対象となっていた法人は、減資を行って資本金を1億円以下に減らしたとしても、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合は外形標準課税の対象となります。
特に注意が必要なのは、資金調達の需要が高いスタートアップやベンチャー企業と呼ばれる法人になります。
10億円以上の資金調達を行い、資本金が増えたまま事業年度の期末日を迎えてしまうと当該事業年度が外形標準課税の対象となるだけでなく、翌年度に減資を行っても、資本剰余金に振り替えるだけでは翌年度以降も引き続き外形標準課税の対象のままとなります。
本来、外形標準課税の対象と想定されていない中小企業でありながら、継続して外形標準課税を負担し続ける必要が出てきますので、資金調達する際は減資までの計画を立てたうえで実行する必要があります。
100%子法人等への対応
3つ目の資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人又は相互会社・外国相互会社の100%子法人等のうち、当該事業年度末日の資本金が1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超える法人が対象となったのは、グループ内の組織再編を行うことにより、外形標準課税の対象から外れようとすることへの対策となります。
まとめ
令和6年度税制改正のうち外形標準課税への影響について解説いたしました。
変更となるのは外形標準課税の対象となる法人になりますので、皆さんの会社にも影響があるのがご確認いただければと思います。