経理部に配属されると、色々な専門用語が経理業務をしていくなかで出てきますが、そのうちの1つが「減価償却費」です。
文字だけ見ていてもよく分からないと思いますので、この記事で、減価償却費の概要、減価償却費の計算方法、減価償却費の会計処理についてご説明します。
筆者は、経理歴10年を超えており、固定資産担当として減価償却費を実際に計算していた経験もあります。
従って、こちらの記事をご理解いただければ、概要の理解としては十分であることを保証致します。
減価償却費の概要
まず、減価償却費の概要について説明します。
減価償却とは、時間の経過や使用により価値が減少する固定資産を取得した際に、取得するために支払った金額をその使用期間に応じて費用計上していく会計処理のことを指します。
そして減価償却費はその費用のことを指します。
何年もの間、長期にわたって使用する固定資産を、購入した年に全額費用計上してしまうと、費用と収益のバランスが崩れてしまいますので、それを調整する処理ですね。
原則として、減価償却はその固定資産の使用可能期間が1年以上、かつ、その取得価格が10万円以上の場合に適用します。
なお、減価償却をする資産は「減価償却資産」と呼びます。
また、減価償却をするうえでの使用可能な期間とは、実際にその資産を用いる期間ではなく、法律により品物ごとに定められている期間のことを指します。詳しくは後ほどご説明しますが、この年数のことを耐用年数と呼びます。
減価償却費の計算方法
減価償却の計算方法には、大きく分けて「定額法」と「定率法」の2種類があります。
文字通り、定額を減価償却費として計上する方法と、簿価に一定の割合をかけたものを減価償却費として計上する方法の2つです。
- 定額法・・・一定額を減価償却費として計上する方法
- 定率法・・・簿価に一定の割合をかけて計算する方法
定額法
定額法は、毎年同額を減価償却費として計上する方法です。
計算式はこちらです。
例えば、耐用年数が5年の機械を150万円で購入した場合について、定額法で考えてみましょう。
上記の計算式に当てはめると、150万円÷5年=30万円が1年間の減価償却費となります。
定率法
定率法は、簿価に一定の割合をかけて計算する方法です。
計算式はこちらです。
そのため、取得した時に最も大きな金額で減価償却費が計上されます。その後は毎年一定の償却率に従って計算されますので、減価償却費の金額は徐々に減少していきます。
定率法の償却率は、固定資産の取得価額や法定耐用年数によって決められます。
償却率については国税庁のHPでご確認ください。
定額法の具体例と同様に、耐用年数が5年の機械を150万円で購入したとします。耐用年数5年の場合は償却率が0.5となりますので、定率法で計算すると初年度は150万円×0.5=75万円が減価償却費となります。
2年目は取得価額150万円から75万円を差し引いた75万円に償却率を掛けて、減価償却費を算出します。
(150万円-75万円) × 0.5 = 37.5万円
このようにして減価償却費を計算していきます。
減価償却計算におけるポイント
減価償却を計算する際のポイントとして「取得価額」と「耐用年数」があります。
取得価額
取得価額とは、減価償却の対象となる固定資産を取得した時点の資産価値です。
取得価額には資産の購入額に加え、その引取にかかる運賃や設置費など、資産を使用できるまでに要した費用も含まれます。
資産を使用できるまでに必要な費用には、引取運賃、荷役費、運送保険料、輸入手数料、関税などが挙げられます。
耐用年数
耐用年数は、減価償却の対象となる資産が使用に耐えうると予想される年数のことです。
個々の資産の償却期間を個別に判定するのは不可能なので、耐用年数は法律で決まっています。具体的には建物は11~50年、車両は10年前後、工具は2~8年、備品は5~15年くらいとなっています。
国税庁のHPに耐用年数表がありますので、実務では耐用年数表と実際に購入した資産を比べながら、耐用年数を決定していきます。
なお、基本的には固定資産であれば減価償却の対象となりますが、時間が経っても価値が変わらない「非償却資産」と呼ばれる固定資産もあります。非償却資産に該当するのは、土地、骨董品、書画などです。
この非償却資産は価値が減りませんので、減価償却を行うことが出来ません。
減価償却費の会計処理
減価償却を会計処理する場合には、直接法と間接法の2種類あります。
直接法は減価償却費を固定資産から直接減少させる方法、間接法は減価償却費を減価償却累計額という別の科目に累積させて表示する方法です。
- 直接法・・・減価償却費を固定資産から直接減少させる方法
- 間接法・・・減価償却費を減価償却累計額という科目に累積させて表示する方法
それぞれの仕訳の計上方法は先ほどの機械装置を例にしますと、以下のようになります。
直接法
減価償却費 30万円 / 機械装置 30万円
間接法
減価償却費 30万円 / 減価償却累計額 30万円
上記の仕訳を計上すると、BSに下記のように開示されます。
直接法
機械装置 120
間接法
機械装置 150
減価償却累計額 △30
まとめ
減価償却費についてご説明しましたが、理解いただけましたでしょうか。
減価償却費はお金を支払わない費用となりますので、最初は理解しづらいところもあるかと思います。
ですが、この記事の基本的な内容を抑えれば難しいことはありませんので、是非理解して経理業務の知識を増やしてください。
もっと網羅的に勉強したい方は、こちらの記事もご覧ください。