経理で仕事をしていると必ず前払費用を管理する場面に遭遇すると思います。
複数期間利用するものを月按分していく作業ですね。
この記事では前払費用の管理方法について解説します。
動画でご覧になりたい方は、こちらの動画をご覧ください。
前払費用を管理するポイント
まず、前払費用を管理するポイントですが、次の2点です。
- 仕訳の計上ルールを決める
- 金額基準を決める
この2点を決めておかないと、管理が大変になります。
仕訳の計上ルールを決める
仕訳の計上ルールですが、仕訳の内容ごとに使用する勘定科目を固定することです。
前払費用には、流動資産に属する前払費用と、固定資産に属する長期前払費用の2種類あります。
例えば、ライセンスの費用は長期前払費用に計上したけど、家賃は前払費用に計上したというような状態だと、2つの科目に残高が分かれるため、残高の合計がいくらになっているのかが把握がしづらいです。
また前払費用を取り崩す際も、前払費用から取り崩せばよいのか、長期前払費用から取り崩すべきなのか、毎回確認しながら仕訳を計上することになります。
仕訳を間違える原因となりますので、仕訳パターンごとに使用する科目を固定しましょう。
前払費用の仕訳パターンの例
例えば、下記のように決めてしまいます。
・前払費用への計上時
前払費用への計上時は長期前払費用は使わず、必ず前払費用を使用する。
・前払費用からの取崩
前払費用から取り崩す時も、長期前払費用は使わず、必ず前払費用を使用する。
・長期前払費用への振替
毎月、もしくは四半期などの決算のタイミングごとに1年を超える残高だけを長期前払費用に振り替える。
振り替えた後は翌月に前払費用に戻しておきましょう。
このように計上と取り崩し時においては前払費用を使用し、長短振替だけを別途行うように仕訳を計上しておけば、仕訳に使用する科目を誤ることはありません。
従って、仕訳パターンごとに使用する勘定科目を固定することで、前払費用と長期前払費用の残高を誤るリスクを低減することができます。
金額基準を決める
次に金額基準を決めるというルールですが、こちらは重要性の判断となります。
厳密に管理するのであれば、期間按分すべきものはすべて前払費用に計上すべきです。
ただ、すべてを前払費用に計上していると管理が大変になりますし、作業工数も増えてしまいます。
そこで、前払費用に計上する際の金額基準を決めてしまいます。
例えば、以下のような基準を設定します。
この場合、複数月使用するものであっても、10万円未満は一括で費用計上してしまいます。
社内で明確な基準を設定して管理すれば、前払費用に計上しているものと前払費用に計上していないものが混在することを防ぐことができます。
ここは重要性の判断になりますので、会計士さんや税理士さんと相談して決めてください。
前払費用の管理表
仕訳をルール通りに計上できれば、次に必要になってくるのが管理表です。
Excelで管理している会社も多いと思いますので、1例を交えながら解説します。
管理表のイメージとしては下記のようなものが一般的です。
この前払費用の管理表のポイントとしては次の3つになります。図の数字がそれぞれに対応しています。
- 取引内容ごとに入力する
- 取り崩しのスケジュールは全て入力する
- 前払費用と長期前払費用の合計残高を集計する
この3つを守って作成することにより、計上額を間違えずに仕訳を計上することができます。
取引内容ごとに入力する
まず1つ目が取引内容ごとに入力することです。
このような表にすることにより、前払費用が関連する仕訳の数字をそのまま入力できることになります。
従って数字の入力ミスも減り、チェックも行いやすいです。
取り崩しのスケジュールは全て入力する
2つ目は取り崩しのスケジュールを予め入力しておくことです。
前払費用に計上した時点で取り崩しスケジュールはほとんどの場合決まっていると思います。
従って、前払費用に計上したタイミングで取り崩すスケジュールも入力したほうが効率的です。
前払費用と長期前払費用の合計残高を集計する
3つ目は表の中に前払費用と長期前払費用の合計残高を集計しておくことです。
仕訳を計上した後に、会計システムの残高を突合する際に使うためです。
前払費用の管理表と会計システムの前払費用の残高がずれていると、必ず仕訳の間違いがあるはずなのでミスに気づきやすくなります。
このように3つのポイントを守った表を作成すれば、仕訳の計上ミスや計上漏れを防ぐことができます。
まとめ
前払費用の管理方法について記載いたしました。
管理をするうえで大事なことは次の2点です。
- ルールをきっちり決めておくこと
- ルール通りに計上されているかをチェックできる運用になっていること
この2点を守っていただければ、前払費用の残高はしっかり管理できるはずです。
上記の例も参考にしながら、皆さんの会社に合う方法を見つけていただければと思います。